中学生を世界に送り出すために教師が持つべきマインドとは?【達人の教室から】

中学生を世界に送り出すために教師が持つべきマインドとは?【達人の教室から】
1月 24, 2017 Ism Editor

中学生を世界に送り出すために教師が持つべきマインドとは?【達人の教室から】

達人の教室から:胡子美由紀(えびすみゆき)先生

はじめに:中学生に学んでほしいこと

「グローバルな視点をもち、世界へ向けて自分の思いを発信し、世の中に貢献できる人を育てる!」これが、私が掲げる英語教師としての理想である。

英語は、未知の世界・人々とつながり、自分の人生経験や知識・視野を広げてくれる言語だ。英語を習得することにより生徒たちの世界を広げ成長・変容を促すことができる。資源が十分にない日本をより豊かにし安心して生活していくために、また人間を含む生物が生きていくことが危ぶまれる地球規模の問題を、全世界の人々と智恵を出し合い解決に向け考えるために、英語を学びツールとして身につけることが日本や世界を平和に豊かに発展させていくことにつながるのだ。

学ぶ目的(何のために学ぶのか)学び方(どのように学ぶのか)

この二つが英語という言葉の指導を通し、私が関わる子どもたちに学んでもらいたいことである。

1. 何のために学ぶのか

自信をもち歩むため、4つの力「人間力」「コミュニケーション力」「行動力」「言語力」を身につけてもらいたい。心技体が整った人格形成と学力形成のためにすべての教育活動は行われているのだ。

(1)「人間力」を身につけた人に

学ぶことは優しさを身につけることにほかならない。心の耐久力(レジリエンス)を高め、少々では折れないしなやかな心を育み、前向きに進んでいける考え方(マインドセット)を身につけてもらいたいと思っている。授業では、ペアやグループを活用した協働的な学びの場をたくさん仕掛けている。その中で、他者と協力することの大切さや支えてもらうことへの感謝の気持ち、何事にも向き合い仲間と共にチャレンジして到達できたときの喜びを味わってもらいたいのだ。また、自らの思いを発信する言語活動を通して、多様な価値観や個性を認めながら意見や立場を調整する力も必要だ。自分と他者を大事にし、他者との関係の中で自分のことを受け止めることができる人になってもらいたい。

広島市立早稲田中で3年間担任した生徒の日記

3年間Miyukiの授業を受けてすごく英語が好きになりました。ペア、グループ、一人の活動などたくさんのことが私の英語力につながったと思います。ペアの活動では何度も支えてもらいました。一緒に悩み考えてくれたパートナーに感謝します。グループ活動も友達の考えをたくさん聞けてこういう考えもあるんだと学べました。残りの授業を大切にしようと思います。元気で笑顔たくさん、声の大きい、英語が飛び交う授業にしたいです。英語大好き!

(2)「コミュニケーション力」のある人に

「コミュニケーション力」とはどういう力だろうか。私は「誰とでも友達になれる力」だと伝えている。英語を通じて国内だけでなく世界中の人々と友達になれる。英語はそれを叶えてくれる言語なのだ。周りの人と豊かな人間関係を築くことができる力を育む。これは数ある教科の中で英語だからできることだ。生徒は英語の時間には、普段はあまり話をしない仲間と関わるチャンスがあり仲間の意外な一面を発見することができると言う。こうした体験が仲間と共に英語を使う喜びやさらに学んでいこうというモチベーションとなるのだ。

(3)「行動力」のある人に

世の中のために何ができるかを考え行動する力をつけてもらいたい。そのためには、身近な話題から国内や国際社会問題などを取り扱った教材を通し、今起きていることを知ることが必要だ。Sunshine English Courseの3年生、Program7にて、NPO法人・宇宙船地球号創設者の山本敏晴氏の活動を取り上げた際には、生徒は各国の社会問題や自分たちの生活との関連を深く考えた。さらにマララ・ユスフザイさんが国連で行った演説を読み、これまでの学習内容と彼女の演説より感じたことから、自分の考えや「自分にとって大切なもの」をグループディスカッション。まとめを即興でクラスの仲間に発表した。価値観を揺さぶり心の内面を見つめることができる教材との出会いや人との関わりの中で、生徒は視野を広げ行動を起こす力を蓄える。私が関わるのは世界初の被爆地、広島の子どもたちだ。平和な世界の実現のために自ら行動を起こす力と勇気を英語の授業を通し育んでもらいたい。

(4)「言語力」のある人に

思いや考えを「自分の言葉で」、しかも準備されたものでなく即興で伝えることができる力をつけてもらいたい。そのためには4技能をバランス良く習得した英語力とメッセージを受け発信する方法を思考する力も必要だ。英語でできることで可能性が広がる。グローバル化が進む中、日本文化に誇りをもち日本について語ることも重要だ。被爆後70年が経過し、様々なことが風化しつつある。そんな中で、被爆の実相、被害、復興に至る過程、人々の思い、そして平和の尊さを伝える使命を現在の生徒たちが担っている。

胡子美由紀先生

2. どのように学ぶのか

目まぐるしく変化する世界に柔軟に対応していくために「何を学んでいくか(What to learn)」も大切である。しかし、もっと大事なのは「どうやって学ぶか(How to learn)」を知ることだ。子どもの学び方は一人一人違う。多様な学習方法を取り入れることにより、自分に合った学び方に気づかせたい。

(1)自律的学習者に

学び方を習得した子どもは自主的に学習を進めていくことができる。授業で行う活動を通し、学習の手立て(学習方略)を知り、選択した方法の検証を自ら行い客観的な視点で修正する(メタ認知方略)力を身につけてもらいたい。自ら学習目標を定め計画に則り学習方略を選択する。さらにそれを自分でモニタリングし次へのステップにつなげることができる力をつけてもらいたいのだ。スプーンフィーディングで与えられることを消化するだけで終わらず、自らの課題を見つけ生涯学び続けることができる人を育てることこそが私たち教師の大きな役割である。

(2)仲間との関わりの中で

一人では手が届かないことでも仲間とならできることがたくさんある。仲間と関わる中で生まれる気づきが大きな学びとなるのだ。目標を共有し、それを達成させるためにお互いが協力することは社会で最も求められる力である。また、仲間との距離を縮め豊かなコミュニケーションを図る人間関係を成立させるために、ルールを共有することが必要だ。私には生徒と私、生徒同士で共有する10のルールがある。私の想いを具現化し生徒同士の深い絆を育むものだ。例えば、活動後にハイファイブをすること。ハイファイブには、共有感をもたせ分かる楽しさや喜びを分かち合い、心をつなぐ効果がある。ルールを徹底すると誰もが声をあげ易くなり支え合いが広がる。それが英語を通じての学びの深まりとなり人間的な成長を促す。人間的な成長の実感があってこそ学力も伸びていく。最後に前任校(広島市立早稲田中)で保護者からいただいた手紙の一部をご紹介する。

「私、Miyuki先生がいたから学校に3年間通えたんよ」卒業式の後、少し寂しそうに娘が言うのを聴きながら一緒に門をくぐって帰りました。入学当初、中学の門をくぐることさえ「私は関係者ではないから入れない」と拒んでいたのに、成長した娘を見て嬉しく思っています。「怖がるからやらせない」「どうせできないからやらせない」今まで家族の中で暗黙のルールになっていた娘への扱いを、娘を通し全て変えていただき感謝の気持ちでいっぱいです。(広島市立井口中学校)

胡子美由紀先生からの一言コメント

「変えることを難しいことを変える」歩みを進めている最中です。

I’ll be an active learner and dream-provider.

本稿は大修館書店の英語教育に掲載された胡子美由紀氏の報告を胡子先生にご寄稿いただき、本サイトに再掲載したものです。さらに英語教育についての様々な情報を得るには、「英語教育」の購読をオススメします。


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