速報解説!就任演説でトランプが使った新時代のキーワードとは!?【えいご人の国際政治】
(宣誓する第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプ)
えいご人の国際政治:山久瀬洋二
英語学習者も知っておこう、大統領就任演説とは
20日正午(日本時間の21日午前2時)アメリカで大統領就任式が行われました。
この式典は、アメリカ人にとって大きな意味のある式典です。もっと言えば、アメリカの政治の背骨といってもいいほどの、重要な式典なのです。
それは、権力者が4年という期間(あるいは2期にわたれば8年)を終えれば、どんなに人気があろうと、影響力があろうと、一市民に戻り、新しい大統領に全ての権限を移譲するというアメリカの民主主義を象徴する式典だからです。
他の国のように、最高権力者の座についた者が、法律や力を利用してその座に固執できないように、アメリカのシステムが機能していることを誇っているのです。
これを象徴する英語が、 “Peaceful transfer of power” という一文です。
この一文こそが、アメリカの民主主義の誇りを象徴するこの式典の重みを代弁しています。
従って、歴代の大統領をはじめ、アメリカの要人はこの式典には必ず出席します。ドナルド・トランプとの立場の違いや評価に関係なく、この式典自体が全てのアメリカ人にとって最も大切な式典なのです。
とはいえ、今回は民主党の議員が参加をボイコットするなど、波乱含みの式典となりました。就任後のパレードでも、トランプ大統領に反対する人が抗議行動の末200人以上逮捕されるなど、決して全ての人が今回の就任式を認めたわけではありませんでした。
就任演説で注目すべき点
トランプ大統領のスピーチでは、今までにない一つの言葉が多用されました。それは “protect” あるいは “protection” という言葉です。それと比較して、 “freedom” や “diversity”といった近年の歴代大統領が多用する「アメリカの価値や理念」に関する言葉は一度も出てきませんでした。
“protection” という言葉を使って、国を守り、国の経済や国の安全を守ることこそ大統領の役目であり、それを遂行することで、今までの「ワシントンの政治のプロによる」政治から「国民そのもののための」政治へと、アメリカの政治のあり方そのものを変えていくと彼は強調しました。
ある意味で、世界と一線を画した、 “America first” という彼のテーゼを確認したことになります。彼は、アメリカ人は黒人から白人まで、あらゆる人がアメリカ人であるとは語りましたが、そうした人々の多様な価値や意識の違いについては触れませんでした。そのかわり、すべての人に強い愛国心を求めました。やはり異例のスピーチであったといえましょう。
もっとも、「プロテクション」というアメリカが世界から距離をおき、孤立していこうとする政策は、実はそんなに新しいものでもありません。モンロー大統領をはじめ、建国後の国づくりのために、アメリカが孤立主義を貫いた時期もあり、それが一つの伝統として残っていったことも事実です。
とはいえ、現代になって、これだけ「他の国と同じく、アメリカは一つの国家であり、他の国が利益を求めるように、アメリカも自分たちのことを第一におくのだ」ということを強調した大統領はいませんでした。しかも、それを今までにないわかりやすい英語で、ゆっくりと強く語った彼の口調の向こうに意識していたのは、世界とはそれほど関わりのない、地方に住むアメリカの保守的な中産階級層がいたことは明らかです。
日米関係の今後
日本は軍事と経済でアメリアに大きく関係しています。
「アメリカが海外に兵隊を送り、世界が繁栄し、そのためにアメリカが経済的にも苦しんでいる」とトランプが明言していることに注目しましょう。
日米安全保障条約が即時どうこうなることはありませんが、今後のアメリカは、国内の企業を保護し、統計上の雇用創造を強調するために、日本企業や貿易のあり方、駐留するアメリカ軍の負担の課題などで、今までにないビジネスライクな要求をしてくるものと思われます。
実際、今回大統領が多用した “protection”と “America first” という言葉は、それをあまりにも強調したために、諸外国には脅威に映るほどでした。
ドナルド・トランプが選挙で使ったスローガン
1980年レーガン陣営が使ったピンバッジ(Let’s make America Great Againとある)
過去に比べ、世界はちょうど人の頭脳のように密接に交流し、利害も交錯しています。一つの「プロテクション」という政策が、世界という頭脳全体にダメージを与えることも考えられます。これから、こうしたことが起きないよう、人々は注視していかなければならないはずです。そして、 “Make America Great Again” という選挙スローガンそのままに、“America” を “great” に、と語るトランプ大統領が、あたかも仕事を失った労働者の叫びをホワイトハウスでリピートしているようなスピーチを続けることで、逆にアメリカが小さく、精神的に余裕のない国にならないかも心配です。
おおらかで、好き嫌い関係なく、世界の課題を受け入れながら、移民や多様な人種が共存するアメリカが今、大きく変化をはじめたのです。
今回の就任演説は、それを象徴するかのような演説でした。
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