オバマ前大統領とドゥテルテ大統領が対立した皮肉な理由とは?【えいご人の国際政治】

オバマ前大統領とドゥテルテ大統領が対立した皮肉な理由とは?【えいご人の国際政治】
January 25, 2017 admin

オバマ前大統領とドゥテルテ大統領が対立した皮肉な理由とは?【えいご人の国際政治】

Drug Checkって何?

今、フィリピンのセブ島に出張しています。

リゾート地で知られるセブ島は、ここ数年、経済的に大きく成長しています。そのセブにある教育センターには、日本をはじめアジア各国からの多くの留学生が英語を学んでいます。

そんなセブのショッピングモールを歩いていると、人々の長い列に行き当たりました。見ると長い列の先に、 Drug Check という看板がかかっています。人々が、自分が麻薬中毒ではないことを証明する書類をもらうために並んでいるのです。就職などにその書類が必要なのです。

フィリピンに広がる麻薬組織について説明するドゥテルテ大統領(2016年)

あなたはドゥテルテ大統領派、それとも反対派?

フィリピンに強権のドゥテルテ大統領 Rodrigo Roa Duterte が登場して半年。麻薬や賄賂を撲滅するためには、射殺も辞さないという強硬な警察活動を展開しています。すでに3,000人以上の麻薬関係者が警察によって殺害されたといわれています。そんなドゥテルテ大統領にアメリカのオバマ前大統領が、人権を侵害しているのではと注意を喚起すると、“Mr. Obama, you can go to hell!” などと暴言を吐いて、アメリカ政府を困惑させたことは記憶に新しいですね。

このときのドゥテルテ大統領の発言が、外交辞令を逸脱した下品なものだと思ったのは私だけではないはずです。

でも、彼はフィリピンでは高い支持率を保ち、現地で活動する日本人の中ですら、過去だれにも成し得なかった慢性的な麻薬や賄賂、そして犯罪に悩むフィリピンを変えた大統領ということで、その手腕に期待する人も多くいます。

そこで、私ももう一度冷静にドゥテルテ大統領の政策について考えてみることにしました。確かに彼の政策は徹底しています。実際に街は安全になり、あれだけ利害関係のしがらみに捉えられていた政治家など、影響力のある人物も、黙って大統領に従い、横行していた賄賂や犯罪も激減したのです。

この政策をとらずに放置したら、この半年間だけでも、ドゥテルテ大統領の指令によって射殺された者よりもはるかに多くの人が命を落とし、社会も汚れたままだったはずだとフィリピンの人々は指摘します。

「犯罪や賄賂、麻薬が横行している国に誰が投資してくれますか?」とドゥテルテ大統領は強調します。

最近では、麻薬組織の大物や、影で賄賂をとり社会を操る政治家などに逮捕状が出され、国家レベルでの浄化作戦がさらに強化されています。抵抗する麻薬組織や黒幕にドゥテルテ大統領自身がいつ暗殺されるかもわかならいと人々が心配しているのも無理はありません。

移民の国アメリカのジレンマ

このフィリピンの事情をもとに、オバマ前大統領とドゥテルテ大統領との対立を分析します。すると、そこには世論と政策の間に揺れる、アメリカの外交政策のジレンマが浮き彫りになってきます。

実はアメリカほど難しく複雑な世論を抱えている国は珍しいのです。

もともと、アメリカにやってくる人の中には、自国で政治的、あるいは経済的に迫害を受けたり苦しめられたりした人が多くいます。また、アメリカ人を2世代、3世代前まで遡れば、ほとんどの人がそうした背景を持つ移民の子孫です。だからこそ、アメリカ社会には、アメリカにやってきた移民を平等に扱い、あらゆる人種や民族の人権を保障しなければいけないという強い意識があり、それがアメリカ社会の根本的な常識となっているのです。

そんなアメリカは同時に超大国で、世界に影響力を持っています。好むと好まざるとにかかわらず、アメリカ経済は世界に浸透しています。ですから、アメリカ政府は、民主主義の理想として、自国の移民社会の常識や価値を世界に向けて語り、外交政策にも利用しようとするのです。「人権」を考えない国には経済的な制裁を!というふうに。

Go to hellとAmerica First

でも多くの国の国内情勢は、移民が新しく国づくりをしたアメリカとは異なります。そこには長い歴史やしがらみ、そして変えることの困難な因習も多く残っています。これらをあたかも手術をして切り取るかのように、アメリカが民主的で自由な国家にせよと言っても、それは簡単にはできない相談です。

「ここに来てお前がやってみろ。そんな理想を無責任に語るものじゃない」と多くの海外の指導者は思うのです。きっとデュテルテ大統領もそう思ったはずです。これが、オバマ前大統領とドゥテルテ大統領との確執の原因なのです。

つまり、これはアメリカの国内世論に支えられた外交政策でのジレンマが生み出した誤解なのです。アメリカが自国の理想を語れば語るほど、世界のリーダーの中にはアレルギー反応がおこり、そのアレルギーが反米的な発言になると、それを受けたアメリカの世論が反発するという負の連鎖や誤解の連鎖が起こるのです。

今回アメリカは大統領が交代しました。

オバマ前大統領は、アメリカでは民主的で、アメリカの良心と理想を追い求める大統領として評価されていました。だからこそ、一部の海外の指導者からはうるさいやつと思われました。対照的に、もしトランプ大統領がアメリカの現実的な利益のみを強調した場合、アメリカの理想を押し付けてくることはないはずだと、一部の海外の指導者は皮肉にも期待するかもしれません。和解の好機というわけです。しかし、実際のところはわかりません。むしろ、世界は “America First” を強調する新しい大統領の打ち出す政策に、翻弄される可能性の方が大きいかもしれないのです。


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