小学校の英語教育を成功させる3つのポイント「マインド、ICT、一貫性」

小学校の英語教育を成功させる3つのポイント「マインド、ICT、一貫性」
July 20, 2017 Ism Editor
英語教育

小学校の英語教育を成功させる3つのポイント「マインド、ICT、一貫性」

突然ですが、みなさんはこれを英語で咄嗟に言えますか? 
また、このレベルの英語を咄嗟に言われて聞き取れますか?

「さかな食べちゃいなさい。」
「おなか一杯だよ。」

「近くに自動販売機はありますか?」

「転んで手をすりむいちゃった。」
「痛い?」

こちらは、小学校教育課程で英語科目が必修として開始した際の、小学生が学ぶ英語の例文です。
(英文は本文内のどこかにあります。)

どういうことかと言いますと、
かねてより学校教育における英語教科に対し、内容改善の声が上がる中、文部科学省は今年の3月に小学校から高等学校までの英語教育の改善策についてを新学習指導要領として発表しました。

(以下 文部科学省HP より引用)

(3)改善の方向  小・中・高等学校共通の事項
(生徒の英語力の目標設定)
○ 「教育振興基本計画」において掲げられている目標の実現に向けて取り組むとともに、高等学校卒業時に、生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指すことが重要である。

 あわせて、生徒の英語力の目標を設定し、調査による把握・分析を行い、きめ細かな指導改善・充実、生徒の学習意欲の向上につなげることが必要である。

 また、これまでに設定されている英語力の目標だけでなく、高校生の特性や、留学も含めた進路等に応じて、高等学校卒業段階で、英検2級から準1級、TOEFL iBT60点前後以上などのスコアを、4技能を測定する客観的な目標として設定し、生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要である。

簡単に言うと、「目標は、高校卒業までにちゃんと英語でコミュニケーションができるようになること」です。

そりゃそうですよね。
ぜひそれを目標にしていきましょう。と思うわけですが、大きな変化の1つに、小学校教育課程に英語科目追加があります。

小学校の先生はたまったもんじゃありません。

今までなかった英語が教科に加わり、さてどうしたもんやら。
小学校では全教科を一人の担任の先生が教えているわけです。

では、小学校の英語科目はどんなものかと言うと、
文部科学省HPに、小学校の英語指導の内容の概略が書かれていました。

(1) 聞くこと
ア ゆっくりはっきりと話されれば,自分のことや身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。
イ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取ることができるようにする。
ウ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,短い話の概要を捉えることができるようにする。

(3) 話すこと[やり取り]
ア 基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりするこ とができるようにする。
イ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。
ウ 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする。

(4) 話すこと[発表]
ア 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
イ 自分のことについて,伝えようとする内容を整理した上で,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
ウ 身近で簡単な事柄について,伝えようとする内容を整理した上で,自 分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

ご覧の通り、小学校の英語は、現在ほとんどの大人でもできない、スピーキングとリスニングをできるようにするというもの。
「基本的な表現」や、「身近で簡単な事柄」とは、冒頭の例文のような範囲と考えられます。

基本的で比較的簡単とはいえ、読み書きだけならまだしも、英会話は普段から英語で喋っていない限り、小学校の先生にとってハードルが高いことは否めません。

そこで今回もカリスマ英語教師安河内哲也氏に、小学校での英語教育の問題とはどのようなものか、また、成功させるにはどのようにすれば良いのかなどを伺ってまいりました。

さすが、文部科学省の英語教育の在り方に関する有識者会議の委員をお務めになったほどのお方。
小学校の先生への具体的なご助言や、英語教育全体の体制教科について非常に具体的で建設的なご提案をうかがうことができました。
前置きが長くなってしまいました。安河内先生のお話をご紹介します。

小学校教育が成功するために必要な3つのポイント

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【安河内哲也:一般財団法人実用英語推進機構代表理事】

「小学校の英語教育を成功させるための3つのポイントがあると考えています。
一つ目は、先生のマインドを変えること。二つ目はICTをうまく導入すること。三つ目は国全体での指導と評価の一体化を実現することです」

1, 「教える」ではなく、「学ぶ」マインドを持つ

まず一つ目のマインドに関してです。

ご存じの通り、小学校の先生は教員養成課程で英語の指導法を学習したわけではありません。
そこで、英語なんか「教える」ことは無理だと考えてしまいがちです。

しかし、小学校での外国語活動は「教える」のではないのです。

先生ももう一度小学生にもどって、子供達と一緒に英語を学ぶ。それが小学校での外国語活動です。

そもそも、ノンネイティブで、英語を専門にしてこなかった先生に英語を「教える」ことは無理でしょう。
英語に関しては、先生は子供達に寄り添っていっしょに学ぶ存在であり、「教える」人ではないのです。

体育の時間と同じです。
例えば、先生は皆サッカーができるわけではないと思います。
でも、本当に基本的な活動ルールだけを指導し、後は子供達と一緒にプレイしますね。そして子供達のほうが、先生よりはるかに上手にプレイする。

英語もそれと同じことです。
英語に関しては、私たち大人より、子供達のほうがうまくなるのは当たり前です。
だから、無理をして英語ができるふりをする必要は全くないのです。

先生の仕事は適切なトレーニングメニューや活動ルールを準備し、子供達と一緒に楽しむことなのです。

私自身が、小学校の先生方に英語の指導法の研修をさせていただいた経験からすると、小学校の先生方はたいへん器用です。

最初は、英語指導に戸惑っている先生方でも、ゲームや活動をどんどん考案し、私が実践してきたものよりはるかに面白く効率的な活動を立案されます。
数々のワークショップでそれを目の当たりにしてきました。
もしかすると、ふだんから多くの教科をアクティブにこなしている分、小学校の先生は、中高の先生よりも柔軟性が高いのかもしれません。

国はICTデータを供給すべき

具体的な問題として、
先生の多くはノンネイティブですし英語を専門としてこなかったわけですから、発音のモデルにもなれないし、子供達の英語を矯正することもできないということがあります。

しかし、こちらも先生自身が無理をして教えようとするのではなく、ICTをうまく活用すればよいのです。
パソコンやタブレットと、テレビ画面やプロジェクターを連結すれば様々な活動を行うことができます。
ネイティブの音を聞かせてまねをさせたり、歌を聞かせてまねをさせたりしましょう。

子供達は抜群の適応力を持っていますから、大人の私たちよりはるかに速く英語を吸収します。

毎年子供達と一緒に学んでいれば、先生の英語力も少しずつ向上することは間違いなしです。

もちろん英語を導入するからには、ICT設備の導入は不可欠です。
よく言われるALTの不足の問題ですが、これもICTの導入により解決できる可能性があります。

例えば、一学級が使用できる40台程度のPCを設備することができれば、アジアや東欧などの英語力が高く、人件費が抑制できる国々とのオンライン英会話を通じて、安価に対面での英会話の体験をさせる事ができます。
しかも、様々な国の人々との会話を通じて、世界での英語の使用状況も体感することができるでしょう。

国の責任としては、ただでさえ忙しい先生の負担を増やしすぎぬよう、教室において、無償もしくは安価に使えるデジタルコンテンツを大量に供給することだと思います。

電子黒板やタブレットがあっても、中に入れるものがなければ、先生が準備しなければなりません。
ゲームや活動がクリックしながら行える様々なツールを小学校の現場に大量に供給していく必要があります。

もちろん、そのような素材をどう利用するかがわかる映像素材等も必要です。

また、これは小学校に限ったことではないのですが、先生同士、学校同士で成功事例をシェアしていくことが重要であると考えます。
小学校での英語活動導入を含む一連の英語教育改革は戦後最大のものと言われています。
この変化を乗り切るには、学校や組織、官民の壁を越えた協力体制を構築することが重要だと考えます。

「さかな食べちゃいなさい。」 Finish your fish.
「おなか一杯だよ。」 I’m full.

「近くに自販機はありますか?」 Are there any vending machine near here?

「転んで手をすりむいちゃった。」 I fell down and skinned my hands.
「痛い?」 Does it hurt?

国レベルでの英会話指導と評価の一体化を

国単位で英語教育を成功させるには、小・中・高・大・社の英語教育に一貫性を持たせることが大切です。

リレーのように、うまくバトンを渡しながら、一人の人間の英語力を各ステージでしっかり伸ばすことが大切です。

しかしながら、現在は、バトンを落としてしまっていることが多いのです。

いうまでもなく、英語教育の分断と破壊を起こしているのは受験。特に大学受験です。

小学校から言語活動をスタートし、中学にバトンを渡して活動を継続しても、高校受験の前には、2技能や3技能のテストのプレッシャーで活動が消えてしまう。多くの生徒は進学校と呼ばれる学校に進学し、大学受験が迫ってくると活動がまた消えていく。大学でも4技能を叫び、言語内容統合型の授業を実践しようとしています。

しかし入学試験とそれが全く矛盾している。国が目指す指導と、影響力のある評価の一体化が全くできていないわけです。
小学校から高校までの指導要領には、4技能のバランスのとれた指導と言語活動の重視が記されています。

学校教育法に基づいて、小中高の先生はこれに準拠した指導に励まれています。しかしながら、この国で最も影響力の大きい大学入試の問題が、この指導要領に全く準拠していない1〜3技能の評価なのです。
どんなに早い時期から英語力を育てても、受験のプレッシャーによって、バランスを崩されてしまうという現象に、日本は長い間苦しんできました。

21世紀になり、世界では、正式な英語のアセスメントに関しては4技能試験しか信頼されていません。

そこで、現在、大学入試を4技能化する動きがかつてないほどに速い速度で進行しています。
しかし、まだ変わろうとしない大学があるのも事実です。
子供達と先生の声を大学に伝え、一刻も早く、指導要領に準拠した世界スタンダードの4技能入試を、全ての大学に実現してもらう。そのことが急務だと考えます。

大学に私たちの声を伝えましょう。
そして、大学入試のせいでどれほど現場の先生が苦しんでいるのか、英語教育が破壊されているのかを伝えましょう。
大学側は現場の声を知れば、必ず動いてくれると信じています。

英語が使える日本を作るために、関係者すべてが協力し小学校の英語教育を成功させましょう!

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