希望か、それとも破滅への道か-フランス大統領選が顕にした世界の重大なテーマ

希望か、それとも破滅への道か-フランス大統領選が顕にした世界の重大なテーマ
5月 10, 2017 admin

希望か、それとも破滅への道か-フランス大統領選が顕にした世界の重大なテーマ

I feel very very happy for France of course but also Europe. Today, is the fight between pro-Europeans and anti-Europeans.



フランスの大統領選挙で、マクロン候補が当選しました。
この文章は、ニューヨークタイムズの取材に答えるフランスの若い有権者のコメントです。
彼が英語で話しているのをそのままここに紹介したので、多少文法的にずれているところがあることはご理解ください。

39歳フランス大統領が誕生した背景にある国民の意識の「分断」

この選挙は極めて重要な選挙でした。
最近 “divide”(分断) という言葉をよく耳にします。
フランスも、有権者の意識が大きく分断されていました。

彼のコメントのように、
ヨーロッパの市民としてのフランスの立場をしっかりと踏まえてゆく(pro-Europe)のか、
それともフランスのみの国益を最優先に考える(anti-Europe)のか
という選択に、人々は挑んだのです。

イギリスがEUからの脱退を決めた国民投票。
そして、アメリカ第一を掲げて大統領となったトランプ氏が起こした旋風。
この風にのれば、フランスがEUから脱退し、移民も締め出し、
元のフランスに戻ることを唱えたルペン(Le Pen)氏が当選しても、決しておかしくない雰囲気がフランスに漂っていたのです。

Divideがおきている状況を地域別にみると面白いことがわかってきます。
失業率が9%以上の地域、特にフランス北東部や南東部で
ルペン氏への支持が固まっていたことが投票の結果から色濃くみえてきます。

こうした地域は失業率のみならず賃金格差にも見舞われ、低賃金、高失業率の地域となっています。
その一方で、左派勢力の支持母体であったフランス北西部(ブリタニー)では、
有権者が決選投票で中道をゆくマクロン候補に投票したことが、39歳という若い指導者がフランスの大統領に選ばれた原因となっています。

ルペン候補はマクロン候補に大きく引き離されたとはいえ、
彼女の率いるNational Frontは、2002年の大統領選挙の時の倍にあたる
全有権者の36%の支持を集めたことも忘れてはなりません。
また、オランド大統領のもとで経済相をつとめたものの、
マクロン候補自身も既成政党に属さない金融エリートだったということも注目されます。



テロ、貧困、失業。 国内の緊迫した状況の原因は共同体の性質によるものなのか

オランダに続き、フランスでも極右勢力が敗退したことは、一時先進国を巻き込みそうになった自国中心主義の潮流をせき止めたことになるのでしょうか。
この後のイギリスやドイツでの選挙がさらに注目されるものの、EUが崩壊するのではという不安を抱いていた人々にとっては、まず安堵した選挙結果になったといえましょう。

EUはもともと、19世紀から第二次世界大戦に至るまで犬猿の中といわれたフランスとドイツとが第二次世界大戦の悲惨な教訓から、
この2国がイニシアチブをとって造られた
欧州石炭鉄鉱共同体European Coal and Steel Communityがその母体となっています。
それは石炭と鉄鋼を共同管理すれば、一つの国のエゴで戦争をおこすことはできないという画期的な発想によるものでした。

それだけに、今でもEUの中核をなすフランスとドイツの動向は、EUそのものの将来に大きな影響を与えることになるわけです。

しかし、現実はまだまだ厳しいといっても過言ではありません。
フランスやドイツではイスラム教過激派によるテロが頻発し、
経済的にも格差に悩んでいます。
Divideにさらされている国民の中でも、失業や貧困に怯える人々は、移民とテロ行為とを直結させ、さらに、そこに移民と失業問題とを結びつけて、フランスをフランス国民の手にと考えます。

ルペン候補の主張は、選挙での敗退とは裏腹に、そうして有権者にしっかりと支持の根を下ろしたことになるようです。



フランス大統領選が顕著にした世界の重大なテーマ

今、イギリスでもドイツでも、さらにフランスでも、
国家はもともとの国民であった人々のみのものではなくなっています。
イギリス人、ドイツ人、そしてフランス人というアイデンティティは
かろうじてその地域で話される言語によって保たれているのです。

それは、世界中からの移民で構成されているアメリカ合衆国が
英語という言語でまとまっている状況と似通ってきているといっても過言ではありません。

このグローバリズムを多用な価値観を共有できる人類の未来への希望と捉えるのか、
それとも自らの存在意義を脅かす脅威と捉えるのか。

フランスの大統領選挙が問いかけた課題は、
これからの世界の動向を占う上で重要なテーマだったのです。

カナダの若き首相 Justin Trudeauからお祝いメッセージ

一国家の若きリーダーと言えば、カナダの首相ジャスティン・トルドー。
マクロン大統領の勝利が決定し、お祝いの言葉をTwitterでツイート。


“マクロン、おめでとう!
すぐに会おう、そしてカナダとフランスの深い繋がりを成長させ、強くするために、これからも頑張ろう!”

かっこいい! スポーツマンのトルドー首相らしい、爽やかなメッセージです。

マクロン大統領の返事も、若さと理想の溢れる素晴らしいメッセージ。


英語訳 “I will serve you on behalf of our motto: liberty, equality, fraternity,”
“私は、私たちの掲げるモットー「自由、平等、友愛」のために、あなたに尽くします。”

日本もぜひ!




関連する記事を英語と日本語訳で読もう(BBC News)

English BBC News – Emmanuel Macron defeats Le Pen to become French president

日本語 BBCニュース – 【仏大統領選】中道派マクロン氏が勝利 ル・ペン氏抑え